L.A.P.中小企業顧問弁護士の会の弁護士のGです。
今回は、中小企業でも利用することの多いフリーランスへの業務委託に関してお話しいたします。
「フリーランス保護を強化するための法律」が近々制定されそうなのをご存知でしょうか?
その法律では「フリーランスとの今まで通りの付き合い方」が通用しなくなる可能性がありますのでぜひお読みください。
1. 多くの中小企業がフリーランスを使っている〜これまでのフリーランスとの付き合い方
ノウハウを集積させたり、細やかな修正を直ちに行ったりするために、自社に関連する業務は、自社の従業員に行わせたい。
でも、業務内容の専門性やマンパワーの関係で、外部に委託せざるを得ない…
そんな悩みを抱いている経営者の皆様は少なくないのではないでしょうか。
実は、法律事務所も同じような状況にあります。
例えば、インターネットに関係する事項など、やや専門的な内容の業務についてまでは事務員に依頼することができず、外部に委託させていただくことが珍しくありません。
この時に、委託する業務の内容によっては、フリーランスとして働いている個人の方にお願いすることもあろうかと思います。
法人に依頼するよりも安価である場合が多いだけでなく、フリーランスとして仕事を続けていけるだけの実績やノウハウを豊富に有している方も多くなっているからです
さて。
フリーランスの方に何らかの業務をお願いする場合、形式ばったやり取りが面倒になり、融通を利かせるために契約書の作成を省略したり、なあなあな契約を締結してしまっていたりしていないでしょうか?
実は、近い将来、そのようなフリーランスとの付き合い方を禁止するような法律が制定される可能性があるようですので、内容を確認してみましょう。
2.法案の内容〜フリーランスとこれまで同様の付き合い方をするとリスクがある?
今回議論されているのは、基本的にフリーランスとして働く個人を守ろうとする法案になります。
したがって、特に委託先を不当に扱うつもりがなかった場合であっても、これまでと同様の付き合い方を続けていただけで、法律に違反するリスクがある訳です。
内閣官房は、「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」を2022年9月13日に公示し、現段階で(2023年1月現在)その内容について意見を募集しています。
内閣官房がこの「方向性」の中で委託者(業務の発注者)に求めている概要は次のとおりです。
・業務委託の際に、 業務委託の内容、報酬額、契約期間、契約の終了事由、中途解除の際の費用等について記載された書面を交付すること
・契約の中途解約・不更新の際には、30 日前までに予告すること
・請求があった場合には、契約の終了理由を明らかにすること
・業務委託の募集の際には、誤解を生じさせる表示をしてはならず、その内容と異なる内容で業務委託をする場合には、その旨の説明をすること
・役務等の提供を受けた日から 60 日以内に報酬を支払うこと
・フリーランスの責めに帰すべき理由のない報酬の減額、通常相場に比べ著しく低い報酬額を不当に定めることなどの禁止
・就業環境の整備として、ハラスメント対策、出産・育児・介護との両立への配慮などを行うこと |
いかがでしょうか?
このような内容を見てみると、フリーランスへの業務委託を、従業員として雇用した場合に近付けるような法案だということが分かります。
たとえ業務を担う従業員を新規採用するリスクを避けるために、フリーランスに業務委託することを選択した場合であっても、フリーランスの扱いを軽視することはできないということになります。
特に、違反した事業者に対しては、行政指導や勧告に加え、違反内容を公表することなども予定されているようです。
3.今後の動き〜フリーランス保護強化の基本的部分はゆるぎそうにない
内閣官房が明らかにした方向性と同じ内容の法律が制定されるかどうかは、現段階において不透明です。
実際に、様々な団体が内閣官房の方向性について意見を述べており、その意見の内容も多種多様なものとなっています。
もっとも、「フリーランスに対する保護を強化しよう」という基本的部分については、大きな変更はないように思います。
今後の議論を注視する必要があるように思いますが、中小企業であっても、相手がフリーランスであるからといって属人的な関係性に甘え、不透明な契約関係のまま委託を続けることにはリスクがあります。
今回の動きを機に、外部委託先との関係性を見直してみていただければと思います。
実際に、
・フリーランスとの契約は、どのような観点から見直せばいいのか?
・そもそも契約書を締結していないがどうしたらいいか?
・多くのフリーランスを抱えているがどうしたらいいか?
「当社はどうしたらいいのだろう?」と気になることがありましたらぜひお気軽にご相談ください。
(了)
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