
中小企業顧問弁護士の会、弁護士のEです。
突然ですが、弁護士も、どこかの事務所に従業員としてどこかに勤めていない限りは、経営者です。
この原稿を書いている2025年の3月現在、私は、無事に今年の確定申告が終わり、一息ついているところです。
ここからは、中小企業の経営者様であれば一定程度共感していただけると思うのですが、私も経営者である以上、年度が終わって税務申告を終えたときには、「そうか…昨年度はこれだけ稼げたのか…道理で忙しかったわけだ」ですとか、「あれ…意外と稼げてないな…何が原因だ?」ですとか、通信簿をもらったような気持ちで一喜一憂した上、昨年度を総括して、次の年度のモチベーションを新たにします。
つまり私の場合は、1年ごとの売上や利益の額が、前年度を総括する指標として機能しているというわけです。

1.裁判官の役割とは何か?〜裁判官が語った「争いが一つ減るということ」
話は少し変わりますが、世の中には、裁判官というお仕事があります。
御存知の通り、裁判所で被告人に刑事事件の判決を言い渡したり、民事事件の勝ち負けを決めたりするお仕事です。
裁判官は判断を出す側ですから、弁護士や検察官とは異なり、「望んだ内容の判決がもらえた、もらえなかった」ですとか、「裁判に勝った、負けた」のような、自分の頑張りが評価される結果が出ることがありません。
また裁判官は公務員ですので、弁護士のように、1年1年でお給料が大きく上下することもないと思います。
日々のお仕事の内容が「勝ち負け」や「売り上げ」というかたちで目に見えない職業の方は、何をモチベーションにしているのでしょうか?
気になった私は、司法修習生の時代、裁判官に直接訊いてみたことがあります。
返ってきた答えは、「何というか……自分のやったことで、世の中の争いが一つ減るというのは、いいことだよねぇ……」というものでした。
今思い返しても、非常に含蓄のある、至言だと思います。

2.実は判決ではなく、和解で終わる裁判がほとんど
ほとんどの紛争は、「100対0」ではない
実は、民事の裁判の場合、判決まで行くことは多くありません。
ほとんどの事件は、ある程度の主張・反論を双方にさせた後、裁判官が和解を勧奨し、当事者が裁判所を介して和解することで紛争が終了します。
例を挙げましょう。
XさんがYさんに対し、100万円の支払いを求めて裁判を起こしたとします。
Xさんの代理人弁護士、Yさんの代理人弁護士は、それぞれの依頼者から話を聴いて、主張をまとめた書面や主張を裏付ける証拠を裁判所に提出し、自分の言い分を認めてもらおうと頑張ります。
もっとも、裁判になるほどこじれた紛争では、どちらかが全面的に悪いということは多くありません(どちらかが100%悪いという事件の場合、悪い方の当事者には攻め手がありませんので、そもそも戦いになりません)。
裁判所に持ち込まれる事件の多くは、(程度の差こそあれ)双方に落ち度があります。
このため、ほとんどのケースでは、判決になったとしても、「100対0」ではなく、双方の落ち度に応じた判断が出るように思います。
裁判所が和解を勧める“現実的”な理由
裁判所は、双方の落ち度や紛争の全体像が見えてきた段階で、「判決を書くとしたらこれくらいだと思う」という相場観(例えば、100万円全額ではなく、YさんからXさんに対して30万円を支払わせる)で、和解案を提示し、和解を勧奨します。
裁判官から和解案が出された場合、Xの代理人、Yの代理人は共に、和解案が妥当なものなのかを検証し、妥当な場合には、XとYそれぞれに、和解を勧めます。

3.自社側の弁護士が和解をすすめる理由とは?
この記事をお読みの方の中には、裁判で、弁護士から和解を強く勧められた、という経営者もいらっしゃるかもしれません。
お気持ちとしては、「なぜ自社側の弁護士が、自社の言い分に寄り添ってくれないのか?」と思われるかもしれませんが、弁護士が自分の依頼者に対して和解を強く勧める一番の理由は、お客様のためのリスクヘッジだということを、頭の片隅にでも置いておいて頂けますと幸いです。
4.なぜ和解は年度末や年末に多いのか?〜裁判は経営者にとって“終わりの見えないストレス”
ちなみに、和解が成立することが多い時期は、「年末」と「年度末」で、今私が抱えている事件の中にも、今週1本(3月)、和解がまとまる予定のものがあります。
お客様にとって、裁判というものは、たとえ先方に落ち度があったとしても、かなりのストレスになるようです。
やっかいな揉め事をひとつ終わらせて、新たな年や新たな年度を迎えたい、というお気持ちがあるのだと思います。
5.まとめ
裁判における「和解」は、決して敗北でも妥協でもありません。
むしろ、当事者双方がこれ以上疲弊せず、現実的な落としどころを見つけて次に進むための“戦略的な選択肢”です。
弁護士が和解を勧めるのは、依頼者にとっての最善を見据えての提案であり、「目先の勝ち負け」にとらわれない広い視野に立った判断です。
経営者として次の一手を見出すためにも、「どう終わらせるか」を冷静に考える視点を持っていただければと思います。
(了)
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新宿区(新宿御苑駅近く)にて開業中の40代男性・E弁護士。上智大学卒。
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