AIが加速度的に進歩する昨今、弁護士業務はどのように変わるのでしょうか?
その中で、中小企業の経営者である皆様が顧問弁護士と顧問契約をする意義はどんなことにあるのでしょうか?
今回のブログ記事では、そのようなことを考えてみたいと思います。
AIの進歩で変わる弁護士の業務
まず、AIの進歩によって弁護士にとっての雑務が緩和されるはずです。
そうなれば経営者の皆様が、「ちょっとしたことを弁護士に気軽に質問したい」という場合に、弁護士が対面や電話での対応にこれまで以上に時間を割けるというメリットがあると思います。
また、判例や法令の解釈を調べたり、裁判のための書面を作成したりする作業にも、AIで代替できる部分はあると思います。
現に最近では、いわゆる「本人訴訟」(弁護士を代理人として依頼せず、当事者本人が裁判の手続きを進めること)も増えていると思います(これは私の体感ですが)。
AIの回答をそのまま使うことは勧めない
ところで、AIというものは、必ず回答を出そうとします。
「分かりません」という回答をしないということが、AIを利用する際の難点とも言えます。
また、AIの利用者が勢い自分に都合の良い回答を求めてプロンプトを形成すると、自分に都合の良い回答をAIはしがちです。 それは裁判の場では誤った主張になる可能性があります。
現に、ありもしない判例・裁判例をあたかも存在するかのようにAIが回答し、それを真に受けて裁判所にそのまま書面で引用して提出してしまったという例も現実に起きております。
結果として、明らかに嘘の判例をでっちあげて主張したということになります。
弁護士であれば懲戒対象になりえますし、本人訴訟では裁判所の信頼を一気に失うことになると思います。
司法修習時代の教え:「法律を忘れたら一人前」
我々弁護士は司法試験に合格した後に、最高裁判所司法研修所という機関で司法修習生として研修を受けます。
昔は2年間、今は1年間ですが、私は1年半という期間の時期に修習生でした。
その際に指導を受けた弁護士に言われたことで印象的だったのは、次の言葉です。
「我々弁護士は、法律を忘れたら一人前だ。
それはどういう意味かというと、法律を覚えている時と同様に、またはそれ以上に、その法律にはこういう条文があるはずだ、その法律の趣旨からしたらこういう条文が無ければおかしいはずだ、ということを法律を見ないでも凡そ分かるようにならなければならないし、そのような思考をできるようになってこそ一人前の弁護士である」
つまり、単に法律の条文を覚えるだけでなく、その趣旨を理解し、どのような規定があるはずかを考えられるようになれという教えです。
これはリーガルマインドとも呼ばれているものです。
法律を大前提としつつも、単に条文を事案に当てはめるだけではなく、公平さやバランスを考え、その事案の解決にとって妥当な結論を導く。
そのような思考ができることが、弁護士の存在意義であると私は教えられました。
経営者の心情や感情に寄り添い、共に最適解を求める
そこには生身の人間の感情も含まれます。
もちろん、クールヘッドでなければなりません。
しかし、クライアントに寄り添いながら、そのクライアントにとっての最善の正解を導き出すために、クライアントの心情や感情に寄り添いながら解決に向かうという伴走支援はAIにはできないと思います。
なぜなら、AIには感情が無いからです。
AI技術は日進月歩であり、最高のツールになりつつあります(もうなっているといわないといけないのかもしれません)。
しかし、だからこそAIが「負け判定」をする戦いであったとしても、最後までクライアントにとっての最適解を求めて共に考え戦うのは、生身の人間である弁護士の役割ではないかと考えております。
AIを活用する時代の、弁護士との適切な関係
もちろんその前提として、弁護士として驕らず更なる研鑽を重ね、AIという最新の技術も取り入れてより良いサービスを皆様にご提供することが、弁護士の使命であると考えております。
むしろ、AIによってある程度の下調べができるからこそ、そのうえで適切な弁護士と適切な関係を築くということが、これからの経営者にとってのメリットのあるお付き合いの仕方になるのではないでしょうか。
(了)
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港区の法律事務所に勤務する40代男性・C弁護士。日本大学卒。
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