F弁護士ブログ(40代女性、@新宿区)

裁判所からの郵便物を放置するとどうなるか?放置のデメリット・刑事罰を受けることも【弁護士が解説】

2023年1月23日

皆様こんにちは。L.A.P.中小企業顧問弁護士の会弁護士Fです。

今回は、「裁判所からの郵便物を放置するとどうなるか?」についてお話しいたします。

会社経営をしていると、取引先と揉めるなどして裁判に巻き込まれることも少なくありません。

裁判になるときは必ず裁判所から郵便物が届きますが、結論から申し上げると「裁判所からの郵便物の放置」によりデメリットが生じる場合があります

この記事では、「裁判所からの郵便物の放置のデメリット」を具体的に解説します。
また、では「経営者はどうしたらいいか」についてもお伝えします。

私自身が体験した具体的な例を交えてお話します。

L.A.P.中小企業顧問弁護士の会よりご紹介するF弁護士
この記事は私(弁護士F)が書きました

裁判の呼び出し日に、相手方が姿を見せなかった

先日、東京地方裁判所で訴訟の期日(呼び出し日)があったので、出向いてきました。

原告は私の依頼者様で、被告は依頼者様の取引先でした。
これは、取引先に対して売買代金の支払いなどを求める内容の裁判でした。

ところが、被告は訴訟の期日に裁判所に姿を見せず、答弁書も提出しませんでした

時間になっても被告が現れないので、裁判官は「本日で結審して、●月●日午後●時●分に判決を言い渡します。」と述べて、期日が終了しました。

判決では、全面的に当方の請求が認められた

後日、この事件の判決が届きました。

内容を確認しましたところ、当方の請求を全面的に認める内容となっていました。

もちろん被告あてにも、裁判所から同じ内容の判決文が発送されています。

実は、裁判所を通じた手続きにおいては、裁判所が行う書類の発送と相手による受取り(法律上は「送達」という用語を使います)が非常に重要な意味を持ちます

裁判所からの書類の受取り日が、今後の裁判の手続きに影響を与える

例えば今回のケースのように、判決文が被告に郵送されて、被告が判決文を受け取った場合を考えてみます。

被告は、判決内容に不服がある場合には控訴することができますが、控訴は、判決を受け取った日の翌日から14日以内に行う必要があります。

この期間内に控訴がない場合には、判決が確定し、再審事由(民事訴訟法338条1項)がない限り、被告は判決内容を争うことができなくなります。

このように、被告が判決を受け取った日が起算点となり、控訴できる期間がいつまでかが決まることになります。

ところで、裁判所から書類が届いた場合に、受け取らなかったり、受け取ったけど放置したりした場合には、一体どうなるのでしょうか

「裁判所から書類は受け取ったが、面倒だから裁判に行かない」場合

まずは、「訴状は受け取ったけど、面倒だから裁判には行かないつもり」という場合、どうなるのでしょうか。

冒頭のケース(私が担当した裁判)では、被告は訴状を受け取りましたが、裁判には来ませんでした。

裁判所から被告あてに訴状を郵送する際、通常ですと、期日への呼出状と答弁書の用紙が同封されています。

もし【答弁書を提出せず、期日にも行かず、裁判所に何の連絡もしない】という対応をした場合には、冒頭のケースのように、原告の主張通りの判決が出てしまう可能性が高いです。

もし何か言い分があるなら、放置せず、期日に裁判所に出向くか、答弁書を出した方がいいと思います。

「どうしたら対応したら良いのかわからない」「答弁書の書き方がわからない」という場合には、弁護士に相談してアドバイスをもらうのが得策です。

悩む経営者

「裁判所からの書類、留守中に不在票が。そのまま受け取らない」場合

次に、「留守中に配達員が来たようで、不在票が入っていた。見たら裁判所からの郵便のようだった。なんとなく内容がわかったので、再配達の手配はせず受け取らなかった」という場合、どうなるのでしょうか。

裁判を起こされる前に、原告から、請求書や支払いの催告書などが届いていることも多いと思います。

このような場合には、郵便受けに不在票が入っていて、差出人として「●●地方裁判所」と書いてあったら、その内容はだいたい想像がつく、ということもあるでしょう。

でも「受け取らなければ裁判は進まない」とまではいえません

民事訴訟法107条には、「書留郵便等に付する送達」(「付郵便」と呼ばれています。)について規定されています。

ざっくりいうと、裁判所が郵便局に郵便物を託した時点で送付先がその郵便物を受け取ったことにしてしまう手続です。

もちろん、この「付郵便」の方法を採るためにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、必ずしも、不在票を無視していれば手続きは進まない、というわけではありませんので注意が必要です。

裁判所からの郵便物、対応は慎重に

裁判所から届く郵便物はいろいろな種類のものがあり、種類により採るべき対応もさまざまです。

ですので

「面倒だから」

「忙しいから」

「よくわからないから」

「多分こういう内容だからほっといても大丈夫」

などと言って放置することはやめましょう。

どうすれば良いのか判断に困る場合には、弁護士に相談されることをお勧めいたします。

手続の種類によっては、裁判所からの呼出状を放置すると、刑事罰を受ける可能性があるからです。

裁判所からの郵便物、放置すると刑事罰を受けることも

刑事罰を受ける可能性がある手続きの一つに「財産開示手続」があります。これについてご紹介いたします。

「財産開示手続」とは、簡単にいいますと、

裁判を起こして判決をもらった債権者などが、裁判所を通じて債務者を呼び出してもらい、債務者に財産の状況を陳述してもらう

という手続きです。
債権回収でお困りの経験を持つ経営者様は、お聞きになったことがあるかもしれませんね。

この手続きは、下記のような場合に効果を発揮します。

財産開示手続がふさわしい例~債権回収で勝訴後、相手の財産を明らかにしたい場合~

具体例でご説明します。

・たとえば、XさんがYさんに100万円を貸していたとします。

・Yさんが返済期限を過ぎてもお金を返してくれないので、XさんはやむなくYさんを被告とする民事訴訟を起こしました。

・Xさんは無事、「YはXに対して金100万円を支払え」という勝訴判決をもらうことができました。しかし、判決が出ても、YさんはXさんに返済してくれません。

・こういった場合、Xさんは裁判所に強制執行を申し立てて、Yさんの財産から、強制的に100万円を取り立てることができます。
(強制執行とは、原告の申立に基づいて、債務者に対する請求権を、裁判所が強制的に実現する手続き)

・Xさんは、YさんがA銀行のB支店に預金口座を持っていることを知っていたので、この預金口座に強制執行をかけました。

・ところが、この預金口座には1万円しか残っていなかったため、Xさんは1万円しか回収できず、残りの99万円は回収することができませんでした。

・Xさんはこの預金口座のほかに、Yさんの財産について、何がどこにあるか知りません。

・Xさんは残りの99万円をどのようにして回収すればいいのでしょうか。

強制執行を申し立てる際には、執行の対象とする財産をある程度具体的に特定しなければなりません。

したがって、Xさんは、Yさんがどこにどんな財産を持っているかが具体的にわからないと、強制執行の手続をとることができません

そうするとせっかく勝訴判決をもらっても、判決が「絵に描いた餅」になってしまいます。

財産開示手続は、こうした「絵に描いた餅」を解消する方法のひとつです。

財産開示手続の呼び出し状をもらった債務者が、それを放置するとどうなるか?

そうはいっても、強制執行をしてくるかもしれない相手に、自分の財産の在りかを進んで明かしたい人はあまりいませんよね。

債務者側からすれば、もし裁判所から財産開示手続の呼び出し状が来ても、


「なんでわざわざ自分の財産について開示しなければならないんだ。裁判所から出頭するようにという手紙が来たけど、面倒だからほっとこう」

という人も多いと思います。

でも、もし、呼出状を受け取ったけど何もせず放置したら…今度は警察から呼び出しがくるかもしれません。

財産開示手続には刑事罰があり、放置すると犯罪になるケースも

実は、財産開示手続には「刑事罰」があるのです。

2020年に民事執行法が改正され、財産開示手続に正当な理由なく出頭しない場合には、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰が設けられました(民事執行法213条5号)。

最近では、この罰則規定に基づいて債権者が刑事告発を行い、実際に債務者が送検されるケースも出てきています。

また、ご説明してきた「財産開示手続」のほかに、「証人尋問の呼び出しに対する不出頭」に対しても、刑事罰が規定されています(民事訴訟法193条)。

このように裁判所から何か書類が届いた場合、書類の種類によっては放置すると犯罪になってしまうケースもあり、要注意です。

裁判所から書類が届いたらなるべく早く弁護士に相談、が基本

ここまで、裁判所から届いた書類を放置するとどうなるか、についてお話ししてきました。

冒頭で結論を述べましたように、放置するとデメリットが生じる場合がありますし、手続によっては、刑事罰になる可能性もあります。

ですので、裁判所から届いた書類は放置せず、なるべく早く弁護士に相談されることをお勧めいたします

また、

・裁判所から届いた書類の取扱いについて詳しく知りたい方
・財産開示手続について詳しく知りたい方
・債権回収についてお悩みの方

も、ぜひ弁護士にご相談ください。

最後に、経営者様は、大きなトラブルがないときこそ「信頼できる弁護士」を見つけておきましょう。

何かあればすぐに相談できる体制を整えておくことが本当に大事だと思います。

(了)

記事を執筆したE弁護士プロフィールと当会のご案内

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新宿区(新宿御苑駅近く)にて開業中の40代女性・F弁護士。早稲田大学卒。
弁護士より:『お話をじっくり伺うことを最も大切にしております。 経営者様のストレスを減らし、業務に専念できるお手伝いができればと思います』

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