F弁護士ブログ(40代女性、@新宿区)

店舗は顧客への安全配慮義務をどこまで問われるか?〜あるスーパーマーケットの裁判例から〜

2021年2月26日

スーパーマーケット

皆様、こんにちは。L.A.P.中小企業顧問弁護士の会弁護士Fです。

今回は、ニュースを見ていて気になる事件がございましたのでご紹介します。
このような事件です。

2018年4月12日午後7時30分頃、買い物のため東京都練馬区内のスーパーマーケットを訪れていた利用客(30代の男性)がレジ前の通路を歩いていたところ、床に落ちていたかぼちゃの天ぷらを踏んで転倒し、右ひざを負傷した、という事件です。
(上の画像はイメージです) 

スーパー利用客負傷事件の概要 

お店はこの利用客に対して6万円余りを支払ったようですが、2019年に利用客側が店舗(を運営する会社)を提訴しました。

ざっくり言いますと、「店舗側は、天ぷらが落ちていて床が滑りやすい状態にあったのを放置して事故を惹起したのだから損害賠償義務を負うべきだ」という内容の主張です。

東京地裁は2020年12月8日に言い渡された判決で、店舗側に対して、利用客に約57万円を支払うよう命じました

判決によれば、この店舗では、天ぷらを大皿に盛り、利用客がトングでプラスチック製パックや惣菜用持帰り袋に入れた上でレジに持っていくという方法をとっていました。

判決では、天ぷらを床に落としたのは店舗従業員ではなく利用客の誰かであると認定しましたが、利用客が行った「パック・袋詰めの仕方や運び方等に不備があり、惣菜を持ってレジに向かう途中で、誤って惣菜をレジ前の通路に落とすことがあり得るのは容易に予想される」としました。

また、平日の午後7時台が混雑する時間帯であること、レジ前に利用客の行列ができていたことからすると、空いているレジを目指してレジ前通路を移動する利用客が相当数いたと考えられることから、もしレジ前通路の床に物が落ちていた場合には、転倒事故が発生するおそれは大きかった、としました。

これらの事情から、店舗側は「本件事故発生時のように、本件店舗が混み合い、相当数の利用客がレジ前通路を歩行することが予想される時間帯については、被告の従業員によるレジ周辺の安全確認を強化、徹底して、レジ前通路の床面に物が落下した状況を生じないようにすべき義務を負っていた」とし、事故発生時に店舗側はこの義務を尽くしていなかったと認定しました。

なお、この判決では(原告は)「足元への注意を払うべきであり、そうしていれば、・・・(中略)落下物があることに容易に気付いて本件事故を回避し得た」等の理由から利用客の過失を5割認定しています。

(この判決文は裁判所の裁判例情報サイトに掲載されています。
検索条件入力画面 に、判決日を「令和2年12月8日」、裁判所を「東京地方裁判所」で検索すると読むことができます)

判決は店舗側には厳しい判断ではあるが

「利用客がレジ前の通路の床に天ぷらを落とす」という事態が全く想定不可能かというと、そうとも言い切れませんが、店舗側にとっては厳しい判断だな・・・と感じます。
本件では、足元に注意を払っていれば回避できたという利用客の過失も認めることで、バランスをとったのだと思います。

いったん事故が起きて裁判になってしまうと、店舗側からみれば、被害者への損害賠償等の支払いに加えて裁判のコスト(裁判の準備や打ち合わせに要する時間・ストレス、弁護士費用など)が発生します。
本件では当時の店長さんが証人として出頭したようです。

事故防止策の費用と事故発生頻度のバランス

ただ、事故をゼロにするためには、こちらについても相当なコストが継続的に生じてくるものと思います(例えば、本件に即していうと、床に物が落ちていないかどうかチェックするために見回り用の人員を増員する、惣菜の販売方法を変える:最初から包装した状態で販売する等、の方策を取ることが考えられます)

事故が起きる確率・頻度や想定される事故内容(人に対する被害が出てしまう事故なのか等)と、事故を未然に防ぐための方策に要する費用を比較して、どのようにバランスをとるか、という経営判断になると思います。

ここで、弁護士の仕事は、経営判断のための材料を御依頼者様とお話し合いをしながら提供していく、ということになろうかと思います。

私がもし、例えば今回のようなスーパーマーケットから御相談を受けたとしたら、空いている時間帯と混雑している時間帯にそれぞれ訪問させていただき、お店の混雑具合や利用客の客層、従業員の方々の人数や配置などを実際に拝見した上で、アドバイスをさせていただくことになるかな、と考えております。

(了)

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新宿区にて開業中の40代女性・F弁護士。早稲田大学卒。
弁護士より:『お話をじっくり伺うことを最も大切にしております。 経営者様のストレスを減らし、業務に専念できるお手伝いができればと思います。』

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