皆様、こんにちは。
L.A.P.中小企業顧問弁護士の会の弁護士Fです。
以前のブログでご紹介いたしました、いわゆる「天ぷら裁判」の続報です。
当該記事はこちらをご覧ください。
店舗は顧客への安全配慮義務をどこまで問われるか?〜あるスーパーマーケットの裁判例から〜
いわゆる「天ぷら裁判」の概要
事件の内容をざっくりご説明いたしますと、
2018年4月12日午後7時30分頃、買い物のため東京都練馬区内のスーパーマーケットを訪れていた利用客(30代の男性)がレジ前の通路を歩いていたところ、床に落ちていたかぼちゃの天ぷらを踏んで転倒し、右ひざを負傷した
という事件です。
利用客の男性がスーパーを訴えて、第1審では、スーパー側に約57万円を支払うよう命じる判決が出ました。
この判決に対し、スーパー側が控訴し、2021年8月4日に、第2審判決が出されました。
結果は、スーパー側の逆転勝訴です。
安全配慮義務が問われたが、スーパー側逆転勝訴が確定
第2審判決は、
本件事故に近接する時点に落ちたものである可能性が高く、少なくとも長時間放置されたものとは認められない
とした上、本件の争点を、
利用客が本件事故現場(レジ前通路)付近に落とした本件天ぷらを短時間放置させたこと
がスーパー側の安全配慮義務違反といえるか、としました。
そして、
本件店舗におけるかぼちゃの天ぷら等の惣菜の販売方法からすれば、惣菜売り場においても、青果物売場と同様に落下物が比較的多くなる可能性はあるが、これは飽くまでも売場付近での話であり、レジ付近の通路とは区別して考える必要がある。(中略)
他方、レジ前通路を通行する利用者からは同通路は見通しがよく・・・(中略)同通路上に商品等の落下物があったとしても目に付きやすく、店舗内が混み合っている時間帯でも足下の落下物を回避することは
特に困難なことではない
という見解を示しました。
その上で、
レジ前通路に本件天ぷらのような商品を利用客が落とすことは通常想定し難いこと等から(中略)
顧客に対する安全配慮義務として、あらかじめレジ前通路付近において落下物による転倒事故が生じる危険性を想定して、従業員においてレジ前通路の状況を目視による確認させたり、従業員を巡回させたりするなどの安全確認のための特段の措置を講じるべき法的義務があったとは認められない (中略)
したがって、利用客が本件事故現場(レジ前通路)付近に落とした本件天ぷらを短時間放置させたことにつき、・・・(中略)安全配慮義務があったということはでき
ない、と結論づけました。
なお、この第2審判決に対し、利用客側が最高裁に上告したようですが、2022年4月21日に上告を受理しないとの決定が出されて、スーパー側勝訴の判決が確定しました。
顧客事故防止策への対策を具体的に示せるかがポイント
第1審がスーパー側にかなり厳しい判断でしたので、会社側(経営者側)のサポートをすることの多い私としては正直ほっとしました。
今回は裁判官の間でも判断が分かれる事案でした。
具体的には、
天ぷらが落とされてから事故までの時間や、消費者庁が出したニュースリリース(店舗内の転倒事故に関する文書)の読み方、レジ前通路に落下物が落とされる可能性の大小について、判断が分かれました。
どの裁判官に割り当てられるか、という運の要素もあるのかもしれませんが、何より大事なのは、
【店舗内で発生する可能性のある事故を予想した上で、通常要求されるレベルの防止策を全うしていた】ということを、店舗側がきちんと証明できるか
という点につきると思います。
つまり、
普段から可能な限り事故防止に気を配っていたことを、裁判官に理解
という点がポイントになると思います。
具体的には、
・清掃や落下物の処理に関するマニュアルの整備
・店舗内の清掃や巡回の記録
・人員の配置に関する資料
などを提出して、立証していくことになるかと思います。
同種事案への対応に向けて参考になるところの多い事件で、私も勉強になりました。
スーパーなど店舗運営をされている経営者様、顧客への安全配慮義務についてどうすべきかお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
(了)
記事を執筆したE弁護士プロフィールと当会のご案内
\ やさしく柔和、じっくりお話を伺う! /
新宿区(新宿御苑駅近く)にて開業中の40代女性・F弁護士。早稲田大学卒。
弁護士より:『お話をじっくり伺うことを最も大切にしております。 経営者様のストレスを減らし、業務に専念できるお手伝いができればと思います』
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