中小企業経営者の皆様、お世話になっております。
L.A.P.中小企業顧問弁護士の会、弁護士のEです。
今回は、「裁判のIT化や運用の現状と、それに伴う中小企業の弁護士選びのメリット」についてお伝えしたいと思います。
全国の中小企業経営者様の顧問弁護士選びのお役に立てば幸いです。
裁判のIT化が進んでいます!
2023年4月に書いた記事「弁護士にとってのリモート会議の計り知れないメリット」でも少し触れたのですが、現在、裁判のIT化が急速に進み、裁判がWEB会議で行われるようになりました。
2020年以前は、
裁判の期日(裁判所で手続きが開催される日)には、原則として原告・被告双方の代理人が裁判所に出頭し、片方の代理人が遠方のときだけ遠方の代理人が電話会議のかたちで参加する
というのが一般的なやり方になっていました。
「裁判手続をIT化で円滑にしよう」という流れは、政府が2017年頃から掲げていたようなのですが、コロナ禍での外出自粛の影響なのか、2020年以降、裁判のIT化が急加速したという印象です。
現在の東京地裁の運用
具体的に、2023年10月現在の東京地裁の運用を申し上げます。
東京地裁では、双方に代理人が就いている場合、裁判の期日の大半がWEB会議のかたちで開催されます(ただし、事件の性質や個別の事情により、若干の例外はあります)。
原告代理人も被告代理人も東京23区内の弁護士だというケースでも、東京地裁に出頭はさせず、裁判所と双方の事務所をインターネットでつないでWEB会議のかたちで期日を開催することが非常に多くなりました。
他の地域の実情はわからないのですが、WEB会議システム自体は、2022年7月4日以降、全国の地方裁判所(本庁及び支部)で運用開始となっています。
以前は、期日が開催される時刻の35分くらい前までに事務所を出て、裁判所の法廷に少し余裕をもって着くようにしていたのですが、現在は、開始時刻ちょうどに事務所のパソコンの前で待機していれば良くなりました。
裁判のIT化による中小企業への影響は?
前置きが長くなりました。
本稿の本題は、「裁判のIT化で、中小企業は何か得をするのか?」という点です。
最も大きい影響としてあるのは、「裁判のIT化が進んで、裁判所に弁護士が出頭する機会が減った」ことにより、「お客様が、地元の弁護士に依頼する必要性や必然性が下がった」という点ではないかと思います。
と言いますのも、上記の通り、以前の運用では、弁護士は原則として事件が審理される裁判所に出頭する必要がありました。
このため、例えば以下のようなケースでは、弁護士費用の面で不都合が生じ、これを防ぐためにお客様の地元の弁護士が選ばれがちでした。
・沖縄の中小企業が、東京のY弁護士と顧問契約をしていた。
・地元中心の商売をしていたところ、取引先が那覇市内のX弁護士を代理人にして、那覇地裁に裁判を起こされた。
・Y弁護士には日頃から事業の相談をしており気心が知れているが、Y弁護士に依頼すると、裁判の期日の都度、出張日当や交通費、宿泊費がかかり、弁護士費用がかさむ。
以前から、遠方の弁護士が電話で参加することは認められていたのですが、電話では、裁判官や相手方代理人と顔を合わせて突っ込んだ議論ができません。
このため重要な期日では、裁判所が遠方であっても出頭するのが望ましく、私もそうしていました。
顧問弁護士に裁判を依頼したいというのは至極真っ当な考え方ですが、他方で、中小企業の皆様にとって、弁護士費用に加えて、さらに費用がかさむというのはかなり頭の痛い問題ではないかと思います(出張費用を出して下さった当時のクライアント様、その節はありがとうございました)。
しかし現在は、上記のケースで東京の弁護士に依頼したとしても、那覇地裁が事件をWEB会議で進めることにしてくれれば、裁判の期日は、
①那覇地裁
②那覇市内のX弁護士の事務所
③東京都内のY弁護士の事務所
の3か所をインターネットでつないで、三者が一同に会したWEB会議のかたちで行うことになります。
このため、Y弁護士がわざわざ那覇地裁に出頭する必要性は大幅に減りました。
地元の弁護士に顧問を依頼するメリットは?
むろん、地元の弁護士から顧問を選ぶことにもメリットはあります。
例えば「顧問契約前に実際に会って、相手の人柄を確かめたい」というご要望があると思います(私自身も、初回面談は対面でお願いしております)。
また、顧問契約後に何かあったとき「すぐ会いに行かれる」というのも地元の弁護士の大きなメリットです。
もっとも、契約前の面談において、WEB会議を希望されるお客様が最近は増えているようです。
このようなお客様の声を受け、L.A.P中小企業顧問弁護士の会の弁護士の中にも、顧問契約前の面談をWEB会議可としている弁護士が複数いるようです。
顧問契約後はメールやWEB会議が主=弁護士と対面が必要なケースはまれ
また、顧問契約後に「対面の面談が必要になるケース」というのは、実はあまり多くないように思います。
私は中小企業を中心に20社以上の顧問先様とお仕事をしており、顧問先様の裁判の代理人も務めておりますが、大半の事件は、メールやWEB会議ツールでお客様とやりとりを行っています。
顧問先様が私の事務所にお越しになるというのは、お客様が希望される場合を除けば、年に1~2件です。
結論として「裁判のIT化により、中小企業は日本全国から顧問弁護士を選べる時代に入った」と言っても過言ではないように思います。
<参考リンク>
① 平成29年6月9日付 内閣府編「未来投資戦略2017 ―Society 5.0 の実現に向けた改革―」
② 裁判所HP内 トピックス「全国の高等裁判所及び地方裁判所でウェブ会議等のITツールを活用した争点整理の運用を開始しました。」
(了)
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新宿区(新宿御苑駅近く)にて開業中の40代男性・E弁護士。上智大学卒。
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