L.A.P.中小企業顧問弁護士の会 事務局・中川のブログです。
中小企業経営者の皆様、会社経営において様々な手続きが必要になったり困りごとが起きたりした時、どの専門家(士業者)に相談しますか?
税理士、社労士、司法書士、弁護士など、さまざまな専門家が会社経営をサポートしていますが、それぞれの士業の違いや「こんなときに活用できる」領域・業務って「あれ?」と思うことがありますよね。
そこで今回は、それらについて専門用語をなるべく使わずに、分かりやすく解説したいと思います。a
1.税理士:税金に関する手続きや相談
ほとんどの中小企業経営者にとって、税務の専門家である税理士とはおつきあいがあるのではないでしょうか。
税理士に任せることの多い月々の記帳代行も、記帳データが、毎年の決算(税務申告)の大元になるからこそ税理士に依頼するのです。
その他、税理士の対応分野は、
・財務状況を鑑みての経営相談
・節税の相談
・融資を受ける際のアドバイス
など、多岐に渡ります。
が、税理士が行う業務の範囲は、税理士のスタンス(その会社にどこまで・どうかかわるか)によって、大きく異なります。
<税理士はこんなときに活用>
・月次の記帳(ほかに記帳代行専門業者もいます)
・決算・確定申告業務の代行(納税者本人か税理士しかできない)
・税務調査対策
・経営相談(経営コンサルタントの領域と重なる)
・助成金手続き代行(社労士でも行う方が多い)
など
2.社会保険労務士(社労士):人に関する手続き
社員数が10数名以上の会社では、社労士を活用されている経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
社労士は、人に関する手続きの専門家です。
具体的な業務は、
・労働者の入社退社や異動に伴う各種手続きの代行
・給与計算代行
・労務問題に関する相談
・就業規則など人の関わる規程の整備
などです。
実は、「社労士がいないと社会保険の手続きや給与計算ができない」ということはありません。
しかし、会社がそれなりの規模になってくると
手続きや給与計算に漏れや間違いが
ないように社労士に依頼しよう
という考え方が出てきます。
また、社労士によっては、「助成金申請手続き」に強い方もいます。
<社労士はこんなときに活用>
・労働及び社会保険に関する事務処理
(平たく言うと、労働者の社会保険などの各種手続き代行。書類を作成したり提出したりします。雇用主もしくは社労士しかできない)
・勤怠管理や給与計算代行
・人事労務に関する相談、労務トラブルに関する相談(ここは弁護士も対応可能領域)
・就業規則や各種規程の整備(ここも弁護士が対応可能な領域)
など
<備考>
特定社労士として登録すると、労働紛争の裁判外の解決手続き(あっせん調停等)も行うことができます(これも弁護士の対応可能領域)。
3.司法書士:登記の手続き
登記には、大きく2つの分野
・商業登記(会社の設立、変更、解散等)および
・不動産登記(売買、相続、抵当権設定等)
があり、いずれも司法書士のメイン業務です。
登記も「司法書士がいないと手続きできない」というものではありません。
しかし、経営者本人が手続きするには煩雑なため、手続きを確実に行いかつ経営者の時間と手間を軽減するために司法書士に依頼する、というケースが多いようです。
なお、登記の手続き(法務局への書類作成と提出)は、当事者が自身でできない場合は司法書士に依頼することがほとんどですが、弁護士も代理人として登記申請することができます。
<司法書士はこんなときに活用> ・会社を新たに設立した際の登記手続き ・会社の役員が変更になった際の登記手続き ・会社の本店を移転した際の登記手続き ・会社の不動産を売却した際の登記手続き など
<備考>
特定の司法書士は、簡裁訴訟代理等関係業務の認定を受けると、簡易裁判所の民事事件で訴訟などの代理人になることができます(弁護士の対応可能領域と一部重なる)。a
4.弁護士:法律が絡むことすべて
弁護士は、法律が絡むあらゆる問題を解決する専門家です。
具体的には、
・法的に困っている方の法律相談に乗ったり
・裁判の代理人となったりして依頼者をサポート
します。
しかし、会社経営者にとって、弁護士は上述の士業ほどには「なじみがない」のではないでしょうか。
なぜならば、ひと口に「法律が絡む問題」といっても大変範囲が広く、
経営者自身がその渦中にいるのかすら
判断がつかないケースが多い
からだと思います。
(弁護士がサポートする領域であることに気づきづらい)
例えば、下記のような状況なら「法律が絡む問題」との見当はつきやすいのですが、
・元従業員から不当解雇だと訴えられた
・会社の作った製品を購入し使用したお客様がケガをした など
仮に、下記のような状況となったとき、多くの経営者にとって「法律が絡む」と判断することは容易でありません。
①海外から食品を輸入して販売する
②美白化粧品の広告キャッチコピーを社員に作らせた
③同一人物によるネット上でのしつこい中傷に困っている
④売掛金を支払わない取引先がいて、
債権時効中断の手続きのために6ヶ月ごとに
請求書を送っているから問題はない、 など
ちなみに、これらには下記のような法律上の問題があります。
①のケース→
食品衛生法により
「検疫所への届け出が必要」なのですが、
何も知らなければスルーしてしまいそうです。
②のケース→
薬機法で様々な制限を受けます。
③のケース→
名誉棄損や営業妨害の問題です。
④のケース→
よく誤解している方がいますが、
請求書を送り続けただけでは時効の中断はできません。
このように日常的に行っている業務に、実は法律がかかわっており、対応を謝ると大きなトラブルになったり金銭的なダメージを被ったりする可能性もあります。
とはいえ、そういった可能性に、経営者の皆様がなかなか気づかないのは無理もないことです。
つまり、「それが弁護士に相談すべきこと否かを判断すること」自体、多くの経営者にとって判断が難しいのです。
顧問弁護士の賢い活用法
そんな中で役に立つのが、顧問弁護士です。
顧問弁護士を雇い、2ヶ月に一度であっても定期的に弁護士と話す機会を持つことをお勧めします。
具体的には
・自社が今どんな状況にあるのか
・何をしようとしているのか
について、
・事業そのもの
・従業員
・取引先の動き
の面から話をするのです。
もしその中で、法律に絡むことがあれば弁護士が必ず指摘してくれますし、「こうすべきですよ」というアドバイスをしてくれます。
何か問題が起きた初期に、弁護士からの適切なアドバイスがあれば、大きな問題となることを防げますから、経営者は安心してご自分のすべきことに集中できますよね。
いかがでしたでしょうか。
各士業の大まかな違いと、「こんなときに活用する・すべき」領域についてご理解いただけましたでしょうか。
当会は「中小企業に顧問弁護士を無料紹介する」組織ですので、4.弁護士(特に顧問弁護士)についての記述がメインになりましたが、各士業の違いをご理解いただいた上で、彼らを賢く活用したいものですね。
(了)
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